経済指標やなどを見ても、これは「円安になるの?」「円高になるの?」といったことがわからず、悩んでいる人は多いと思います。
そのため、今回は中長期投資や政策金融といった側面から、どのようなケースに円が上がり、どのような場面で円が下がるのか、という点について解説をしていきます。
この記事で分かること:
- 景況判断はどのような場合に行われるのか。
- 景気が悪くなると円相場はどうなるのか
- 利上げ利下げが行われると円相場はどうなるのか
- 各通貨の特徴
タップできる目次
「景気がの良しあし」をどのように投資家は判断するのか。
投資家は各国で発表される「経済指標」によって把握しています。特に、予測値と発表された実態値の乖離には関心を寄せており、その乖離が大きいほど、為替変動が大きくなります。
それぞれの経済指標には、一体どのような役割があります。
そのためここでは、特に重要となる「消費者物価指数」、「四半期国内生産」、「景気動向指数」、について解説していきます。
消費者物価指数
消費者物価指数は、全国の世帯が購入する財やサービスの価格の変動を時系列によってあらわしたものです。
物価の変動は、現在の景況がインフレ期に属するのか、デフレ期に属するのかを把握する契機となり、中央銀行の政策予測にも役立てることができます。
四半期国内生産(GDP)
GDPは有価証券報告書と同じように、四半期ごとに発表されます。
GDPは国民の豊かさに直結する指数であるため、現在の景況を分析するには、非常に重要な指標となります。
景気動向指数
景気動向指数とは文字通り、景気の動向を表す指標のことで、景気に対して先行して動く「先行指数」、景気とほぼ一致して動く「一致指数」、そして、景気よりもやや遅れて動く「遅行指数」の3本によってグラフが構成されています。
このグラフでは、経済に対し、生産、雇用など様々など景気に敏感に反応する指数の動きを統合しているため、景気の現状把握や将来予測を行うことができます。
一般的に、この一致指数が上昇している場合には景気の「拡張局面」、指数が減少している場合には「縮小局面」とみなします。
景気が変化すると、円相場はどうなる?
好景気時には円安になりやすいといわれています。なぜなら、日本は貿易立国であり、円安のほうが貿易に有利になるためです。
そのため、第二次安倍政権下で行われた、経済政策である「アベノミクス」では、日銀による積極的金融緩和により、好景気となり、2016年には円相場が一時120円を超えました。
一方で、景気が悪い場合は、貿易が不利になることなどから、円高に陥りやすいことが、上のチャートから把握することができます。
特に、上のチャート表のように、リーマンショック時には約四年間で、20円ほどの大幅下落を記録しました。
しかし、「武漢ショック時」には中長期的な不況が予測され、一時円相場は101円まで下落しましたが、リーマンショック時とは違い続伸的な下落を記録しませんでした。
一体なぜなのでしょうか?
理由は、①為替相場が相対市場であること②円がリスクオフ通貨であることに起因しています。
これらについて順を追って解説していきます。
為替相場は相対市場
為替相場は相対市場です。つまり、相対的に通貨の価値が同一の場合、ドル円市場が変化することはありません。
一方で、どちらか片方の通貨の価値が激しく変動すると、相対指標のため、相場は激しく上下します。
このようなことを鑑みると、リーマンショックでは、直接的な金融恐慌が、アメリカで発生したため、円の価値が相対的に高まったが、コロナ不況は全世界で同じように観測されたため、円の相対的価値があまり変わらなかったということが考えられます。
円がリスクオフ通貨
(参考:三井住友トラストアセットマネジメント)
前述したように、円は一般的に「リスクオフ通貨」と考えられており、買いが進行します。
理由は以下2点です。
日本円がリスクオフ通貨である理由:
- 対外的に様々な資産を保有しており、有事の際にも資金回収が可能であるから。
- 不景気時にキャリートレードを行うための資金調達需要が増加するから。
ちなみに、キャリートレードとは、低金利の通貨から高金利の通貨を買い建ててスワップ金利を狙っていく取引のことで、この取引が起こる場合は、市場の変動率が低いほど金利のスワップで収益確保ができるため、投資家には有利になります。
次項では、主要国の政策金利が変動した時の相場の動きについて解説をしていきます。
主要国の政策金利変動が与える効果
ここでは、政策金利を上げた場合と、下げた場合、一般的にどのようなことが起こるのかについて解説していきます。
政策金利を上げた場合
政策金利を上げた場合、インフレの抑止につながると考えられています。
なぜなら、金利を上げた場合、企業や銀行が資金調達が難しくなり経済活動が抑止されるからです。
仮に「日本円」で利上げが発表された場合は、スワップポイントが低くなる懸念から、円建てで外貨を買うことが少なくなり、結果的に円安の状態となります。
政策金利を下げた場合
政策金利を下げた場合、金融機関が低い利率で資金を調達できるようになるため、フラット35をはじめとする住宅ローンや企業に対する融資の金利が低下し、資金が多く使われるようになり、経済が活性化されます。
「日本円」で利下げが発表された際には、スワップポイントが高くなるので、円建てで外貨を買うことが多くなり、円高の状態となります。
各国通貨の役割
通貨は主要国通貨とそうでない通貨に分けられ、それぞれをメジャー、マイナーと呼称しています。
本項では、以下の通貨について紹介いたします。
メジャー銘柄:
メジャー銘柄
メジャーは取引量が多いため、成り行きや指値で買うことがマイナーに比べ、簡単にできる通貨です。
また、マイナー銘柄と比較しても値段の変動が少ないため、安定的に取引を行うことができます。
しかし、経済の成熟により、各国通貨の永久的な向上は見込めません。
アメリカドル(USD)
(参考:米ドル/円 – FXレート・チャート – Yahoo!ファイナンス)
アメリカドルは世界の基軸通貨で、国際間ビジネスの決済においては米ドルが最も多く使われます。
ここ四年間の間、トランプ氏の金融緩和政策により、円高ドル安の状態が続いていました。しかし、感染症拡大の影響により、ドルの高騰が相次いでいます。
さらに、バイデン氏が勝利したため、政策が大きく変わることが予測され、今後のFRBの金融政策には注目する必要があります。
ユーロ
(参考:ユーロ/円 – FXレート・チャート – Yahoo!ファイナンス)
ユーロは欧州統一通貨で、フランスや、ギリシャ、スペインやイタリアなど様々な国で使用されています。
米ドル同様、貿易決済や、外貨準備などで利用されることが多いです。
昨今では、ギリシャを発端として、ユーロ危機が起こっていましたが、近年では持ち直しており、2014年には一時一ユーロ144円を超しました。
スイスフラン(CHF)
(参考:スイスフラン/円 – FXレート・チャート – Yahoo!ファイナンス)
スイスフランも日本円と同じように、「リスクオフ通貨である」と考えられています。
なぜなら、日本円と同様に、金利が低く、キャリートレードの対象となりやすい通貨というだけでなく、政治的中立性が高く、軍事衝突リスク、対外貿易リスクが極めて低いことや、金融サービスが安定していることからも有事の際に資金需要が浴びやすい通貨であるためです。
そのため、リスクオフによるキャリートレードを行う場合は、スイスフランもおすすめです。
ブリティシュポンド(GBP)
(参考:英ポンド/円 – FXレート・チャート – Yahoo!ファイナンス)
ブリティッシュポンドは、第二次世界大戦前では世界の基軸通貨でした。
第二次世界大戦以降も米ドルの台頭により、取引量は減少したもの、昔は安定通貨と多くの投資家からは、とらえられていました。
しかし、今はリスク通貨としてとらえられています。
なぜなら、イギリスは2020年にEU(ヨーロッパ連合)から正式に離脱したためです。
20年一月ごろに、合意なき離脱は回避されましたが、現在でも関税や諸権利、国境などでEUともめており、今後イギリスにとって最も不利な形で進められていく可能性があり、FX会社のスプレッドも非常に高いものとなっています。
そのため、ブリティッシュポンドに投資する際には、必ず細心の注意を払うようにしましょう。
マイナー銘柄
マイナー銘柄は基本的に、取引量がメジャー銘柄に比べてかなり少ないため、変動が激しく、取引数量が少ないため指値や成り行きが刺さらないです。
これらマイナー銘柄の詳細について解説をしていきます。
中国人民元
(参考:人民元/円 – FXレート・チャート – Yahoo!ファイナンス)
私たちが中国人民元を取引する場合、オフショア通貨という、中国本土ではなく香港やマカオで取引されている中国人民元を購入することになります。
現在、中国人民元は、金融政策やコロナ政策の奏功によって、7月ごろから堅実に推移していますが、様々なリスクがあります。
中国が抱えるリスクは、内政リスク、米中関係リスクに分類され、これらは出資者に大きな損失を与えます。
そのため、中国人民元を取引する場合は、これらのリスクを鑑みたうえで投資を行いましょう。
トルコリラ
(参考:トルコリラ/円(TRY/JPY) :外国為替 | マーケット情報 | 楽天証券)
トルコリラはトルコ国内での急激な物価上昇の影響を受けて、価値がここ数年で大暴落した通貨です。
さらに、トルコ中央銀行が経常赤字を記録していること、アメリカがロシア製ミサイル配備を理由に経済制裁を発動したことなどもあり、下げには歯止めがかかっていません。
このようなことから、トルコリラに投資をするときには、「いつまで下がるか」、「利上げの発表がされたか」などに着眼し、取引するのがベストです。
ロシアルーブル
(参考:ロシアルーブル/円(RUB/JPY) :外国為替 | マーケット情報 | 楽天証券)
ロシアルーブルは、アメリカから経済制裁を受けている影響で現在暴落している通貨です。
さらに、昨今発生した史上最悪規模のハッキング騒動などで、今後追加制裁が科される可能性があります。
ロシアルーブルを買う際には、「米露関係」「米欧関係」に注意して購入をするようにしましょう。
まとめ
景況の良しあしは、「景気動向指数」や「四半期GDP」などの指数をこまめに確認することにより、中長期動向を把握しましょう。
また、日銀で利上げが発表された場合には円安、利下げが発表された場合は、円高となる傾向がありますが、現実の投資においては、事象が複雑に絡み合うため、他の経済動向などにも注視しましょう。